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「大都市圏と地方における政治意識」世論調査報告
 
 
安倍政治への対決の仕方
山口 二郎
 
 
 
 統一地方選挙の前哨戦として注目されていた愛知県知事選挙と北九州市長選挙は、与野党一勝一敗という結果に終わり、柳沢伯夫厚労相の首はつながったようである。しかし、中盤まで圧倒的な劣勢を伝えられていた愛知県知事選挙で、野党系の候補が肉薄したことは、安倍政治に対する国民の不満が大きいことの表れであろう。共同通信の世論調査では、内閣支持率40%に対して不支持率が44%に上り、不支持が支持を上回っている。柳沢氏の首は安泰でも、もはや安倍内閣全体は瀕死の情勢である。

 とは言うものの、安倍政治を終わらせるのは簡単ではない。安倍という人はおそらく、幼い頃から出来の悪さを責められることに慣れているはずであり、むしろこれからその真価が発揮されるであろう。どんなに出来が悪くても、総理が自分から政権を投げ出さない限り、その内閣は続く。また、今のところ安倍政権は自滅の形であり、野党に対する期待感が高まっているわけではない。人間失格の閣僚を攻撃するのは大いに必要であるが、それを前向きの政策論議につなげなければ、国民も飽きてしまう。また、知事や市長の選挙では、与野党の一騎打ちという形になって、有権者にはわかりやすい選択肢が提供されるが、国政選挙では野党各党の利害、思惑が食い違い、はっきりした対決構図が見えてこない恐れもある。

 そこで、野党に暫定的な政権綱領を作ることを提案したい。選挙で政党が票を取り合うことは仕方がない。しかし、自公連立政権を倒した暁に何をするのか、国民に示さなければ期待もわいてこない。話はきわめて単純である。どうせ野党が政権を取っても、頑丈な長期政権ができるわけはない。その限界をわきまえ、今の日本で最も重要な少数の政策課題について、転換の道筋を示すことこそ、野党の責任ある態度である。

 具体的にいえば、人間の尊厳をキーワードに、社会保障、雇用、教育、地域格差の是正の四つのテーマについて、小泉−安倍政治とは反対のことをすると約束すればよい。小泉−安倍政治では、ハンディを負った人間を邪魔者扱いしたり労働者をモノ扱いしたりすることによって、経済の活性化と財政の節約を図ってきた。今度は女性を機械扱いすることで少子化に歯止めをかけようということであろう。それで景気がよくなり、財政赤字が減少しても、普通の人間の所には恩恵が回ってこないのは明らかである。非正規雇用に対する差別の廃止、雇用形態に関係なく使用者が賃金に比例して払う社会保障税の導入、医療や介護保険への財源投入、中高等教育の学費について卒業後に支払う無利子融資制度の創設など、国民の不安を解消する具体策はいくつも思いつく。人々が生きる希望と働く力を回復すれば、それが将来の税収を生み出すはずであり、短期的には財政赤字が増えてもかまわないと私は考える。

 安倍首相は、憲法改正を参議院選挙の争点にしたいといっている。言いたいなら言わせておけばよい。今の安倍が憲法改正を唱えても、そんな空虚な宣伝に国民がなびくはずはない。それよりも、国民の生命、生活を守ることが選挙の際大争点である。野党の闘う姿勢が問われている。

(週刊金曜日2月9日号)