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「大都市圏と地方における政治意識」世論調査報告
 
 
民主政治再生への反撃を
山口 二郎
 
 
 
 浅野史郎前宮城県知事が東京都知事選挙出馬の意向を固めた。これでようやく石原慎太郎を追い落とす機会が訪れたと安堵し、期待している人は、東京のみならず全国にいるに違いない。当然、私もその一人である。石原の数々の悪行は本誌の読者には今更説明するまでもない。石原のような人間失格の独裁者が都知事の座に君臨することは東京の恥のみならず、日本の恥である。これから一か月の間、石原を引きずりおろすために心ある市民はあらゆる行動を取るべきである。

 たまたま二月の上旬に浅野氏とゆっくり話をする機会があった。宮城県政の総括をしたときに、浅野氏は選挙の戦い方から改革しなければ本当の政治・行政改革はできないと力説していた。選挙の際の金集め、票集めで既成の政党や大組織に借りを作れば、どうしてもその人々の言うことに影響を受けてしまい、自由に政策を実行することが難しくなる。したがって、いかなる組織にも借りを作らず選挙をするのが、改革派首長の最初の課題であるというわけである。民主党から出馬要請があったときに断ったのも、民主党という既成政党に乗らないという浅野氏一流の戦略があったと見るべきであろう。浅野氏が単騎名乗りを上げたことで、良識ある市民が自主的に連帯し、東京における民主主義の回復のために戦うという理想的な構図が可能になるはずである。

 この知事選挙は、石原の心胆を寒からしめるだけでは何の意味もない。図々しさにおいては人後に落ちない石原のことだから、選挙の過程がどうであれ、勝ちさえすればやりたい放題をやるに違いない。だから、何が何でも勝たなければならない。その際問題となるのは、反石原陣営の分裂である。既に共産党推薦で、前足立区長の吉田万三氏が立候補を表明している。共産党が都政における最強の野党として石原の腐敗を追及したことには、頭が下がる思いである。当初及び腰であったメディアがようやく石原一家による都政の私物化を報道するようになったのも、共産党議員や「赤旗」のキャンペーンがあったからこそである。心ある市民はみなそのことを理解している。

 しかし、だからといってそうした市民が知事選挙で共産党単独推薦の候補を支持することにはつながらないであろう。選挙の最大目的が石原を引きずりおろすことにある以上、民主主義を愛し、人間の尊厳を貴ぶ市民は反石原の一点で結集、協力すべきである。その際にはより幅広く市民の支持を得られる候補にまとまることが必要となる。

 共産党のポスターに、「日本には確かな野党が必要です」と書いてある。しかし、共産党が独自候補の擁立にこだわって、反自民、反石原の票を分散させるという行動を続けるならば、共産党が、その意図とは別に、自民党や石原の増長をもたらすという結果になる。そうなると、安倍晋三や石原は、「自民党・石原には確かな野党が必要です」とほくそ笑むことだろう。逆に、都知事選挙において反石原の広範な協力が実現できれば、そこから自公連立政権の悪政に終止符を打つ可能性も広がるに違いない。残された時間は短いが、心ある市民と共産党との対話の可能性をぎりぎりまで追求したい。

(週刊金曜日3月9日号)