●報告
2003年1月31日、北海道大学学術交流会館講堂(第1部)、かでる2・7 大会議室(第2部)において、公開シンポジウム「市民の環境カバナンスと環境教育」が行われた。
地球温暖化を初めとして、環境問題がグローバル化した現在、市民が主体となって環境に関わる政策を決めていく「市民による環境ガバナンス」の確立が緊急を要する課題となっている。国や行政のガバナンスが伝統的に強い日本では、とくにダムなどの大規模公共事業に見られるように、住民の意向に反し、環境への配慮を欠いた政策がとられることが少なくない。このシンポジウムでは、持続的な社会の実現をめざす市民による環境ガバナンスを確立するには市民に対するどのような環境教育が求められているのか、また、大学・大学院の果たすべき役割は何であるかを明らかにすることを目的に、多数の研究者・実務家をゲストに迎え、報告およびディスカッションが行われた。
第1部では、公・民を問わず、多様な立場・視点からの環境教育の事列が紹介された。地域との連携を重視した実践や、海外で開発されたプログラムを日本で活用するための取り組み等の報告をふまえ、パネルディスカッションでも様々な意見の交換をみて、有用な問題提起の機会となった。第2部では新たな参加者を迎え、海外と日本での市民中心の活動の報告がなされた。目的達成までの具体的な過程を聞くことは、今後の環境ガバナンス教育のあり方を考えるうえで、大きな収穫となった。
主な参加者・報告タイトル等は以下のとおり。
【第1部】「市民による環境ガバナンスと大学・大学院での環境教育」
〈報告〉
1.阿部 治(立教大学)「日本型の環境教育の課題」
2.神田房行(北海道教育大学釧路校)
「北海道教育大学での環境教育」
3.古川 和(ジャパンGEMSセンター)「GEMSによる環境教育」
4.宮本英樹(NPO法人ねおす)「町づくり・地域と環境教育」
5.森 哲郎((株)KPMG審査登録機構)
「アメリカ・エール大学環境大学院での環境教育システム」
6.宮本 融(北海道大学)
「アメリカのいくつかの環境大学院での環境教育」
7. Herbert Donovan(立教大学)「3Es Prospects in Japan for Environmental Education in English日本における英語での環境教育の将来性」
〈パネルディスカッション〉「北海道での環境大学院の可能性」
パネリスト:阿部 治、神田房行、畠山武道(北海道大学)、森 哲郎、山本幹彦(NPO法人当別エコロジカルコミュニティー)ほか
コーディネーター:小野有五(北海道大学)
【第2部】「持続的な社会の実現をめざす市民ガバナンス」
〈講演〉
1.今泉みね子(ドイツ・フライブルグ在住、環境ジャーナリスト)
「ドイツの『森の幼稚園』と市民が決める環境政策」
2.姫野雅義(NPO法人吉野川みんなの会)
|