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「大都市圏と地方における政治意識」世論調査報告

 

2004年02月07日(土) 公開シンポジウム
「帝国/グローバル化時代のデモクラシー」
ロナルド・ドーア●ロンドン大学名誉教授
田中秀征●福山大学教授・元経済企画庁長官
ゲーリー・ガーストル●メリーランド大学教授
 
ご案内 プログラム PROGRAM(English) 要約 感想
要約

 シンポジウムでは、遠藤乾氏(北海道大学法学部助教授)により、趣旨説明として以下の点が議論の素材的論点として提示された。

(1) 現代の国際政治においてアメリカの<帝国>的性格すなわち軍事的政治的経済的な優位性

(2) そのアメリカさえもがグローバル化により移民・テロ・伝染病・コンピューターウィルスなど越境的な国際問題にさらされている

(3) これらの越境的な問題に対して有効な枠組(越境的政治決定)が議論されていないこと

(4) デモクラシーの問題としてはさしあたり国民主権的なモデルしか想定されておらず越境的問題の解決にデモクラシーがいかなる点でアプローチできるのか(代議制民主主義の限界)、また市民社会や民衆と国際化する問題との接点をデモクラシーという視点からどのようにアプローチするのか、今後検討が必要であること

 以上の趣旨説明を受けて、ロナルド・ドーア氏(ロンドン大学名誉教授)からは、「グローバル化する世界における民主主義への脅威」と題された基調講演が行われた。講演では、民主主義という用語が、国際政治の場面では「応援の言葉(発言者の主観が入る)」として用いられており、そのため価値付加的な用語であることが確認された。その上でドーア氏の定義として「選挙の時、流血せず政権交代が実質的に可能であること、常時、時の政権者に対抗する者の言論・集会の自由が、独立した法廷・警察に守られていること」等、国民国家内の民主主義的条件について定義化が試みられた。またドーア氏は、グローバル化についても現象面、越境関係、歴史的段階の三つの層におけるグルーバル化の定義化を試みており、以上の定義をふまえて、現代のグローバル化に伴う課題を「民主主義への脅威」として四点から整理した。その四点とは以下のとおりである。

(1) テロと基本的人権の侵食

(2) 政策課題の技術的複雑化

(3) 国民の同質性

(4) 経済主権の侵食による、国家の無力化・制度選択の自由の損失

 また田中秀征氏(福山大学教授)により、「<グローバル化/帝国>の中の日本の集団安全保障」と題し、最近のイラク派兵の問題を中心とした、日本の安全保障政策を基にした民主主義の課題が報告された。田中氏の報告によれば、日本の安全保障をめぐる国会の議論では、「集団的自衛権」の行使を現行憲法とどのようにすり合わせるのかという議論が、与党や野党においても危うさを含むものであることが確認された。その上で、日本の憲法が、国連憲章との補完的な安全保障体制を前提にしているものであることが田中氏によって確認された。しかし実際には、国連を中心とした安全保障体制は未完成に終わり、現実的には「超大国による安全保障」すなわち集団的自衛権の行使によって国際紛争が解決される例が多く、その積み重ねによりアメリカが結果として軍事的な<帝国>として台頭してきたという点が報告された。以上のような国際状況をふまえ、安全保障をめぐり、国際的な関係において民主主義を論ずる場合、以下の三層からの民主主義を検討する必要がある点が提案された。

(1) 国内民主主義

(2) 国際民主主義(無国籍な問題:人権・環境問題・女性の社会進出等)

(3) 国家間民主主義

 またガストール氏(メリーランド大学教授)からは、「グローバリゼーションとアメリカン・ヘゲモニーの時代における民主主義への脅威」と題して、現代のグローバル化やアメリカ中心のヘゲモニーの形成がどのような歴史の過程をたどったのかという点について、四つの段階に区分して歴史的考察がなされた。その時代区分とは以下のとおりである。

(1) 19世紀のパックス・ブリタニカ

(2) 第一次第二次大戦両対戦期におけるグローバル化の形成と崩壊

(3) 戦後米合衆国指導のもとのに形成された「自由主義世界」グローバルシステム

(4) パックス・アメリカーナ(民主主義的統治)に対して敵対的な国際秩序

 以上の報告により、少なくとも戦後から70年代までは、冷戦の影響などもあり、「自由主義的世界」グローバルシステムが国民国家の形成や資本主義の発展、反植民地主義的運動へ貢献し戦後の世界秩序の基盤となっていた点が確認された。しかし、それ以降は、オイルショックなど経済的な問題により社会民主主義的な統制への疑問が生じ、また80年代には電子部門の発達により資本・市場の規模拡大が急激に行われたこと、さらにはソビエト連邦の崩壊により「冷戦の終結」を迎えたこと、以上の点から、「自由主義世界」グローバルシステムが変更を迫られ、今日的なアメリカの帝国化とグローバリゼーションの時代に取って代わられたことが確認された。

 ガストール氏は、またこれらのアメリカ中心の「グローバル権力」を押さえ込む可能性として、「イスラム急進派」「対抗的国家・ブロック群」「国際的な社会運動と統治機構」をとりあげた。また「資本主義を統合し米合衆国のグローバル権力を抑制する方策」として以上の三点を、社会民主主義の視点から主張することがグローバル時代における課題である点を指摘した。

 中村研一氏(北海道大学副学長)からは、「帝国を抱きしめて−世界権力と民主主義の将来」と題する報告が行われた。中村氏は、旧来植民地主義的な帝国として理解されなかったアメリカが<帝国>として批判されてきている点を指摘した。その理由として中村氏は、強大な軍事力をもとに「世界の警察官」としてアメリカが国際社会で振舞っていること、国際政治の側面では経済力や軍事力・政治力などによって、アメリカが「世界の(失格な)裁判官」として振舞っている点、以上の点をあげた。また中村氏は、アメリカが<帝国>化する一方で、グローバルな問題(核による人類の共滅、環境問題、難民の問題など)に意図的に対応しない、うまく対応できない領域が発生している点を指摘した。このような状況をふまえ中村氏は、グローバル・デモクラシー(世界民主主義)という観点から、以下のような点を今後の課題として提起した。

(1) 国家の統治機構や代議制の拡大だけではグローバルな問題解決にたる制度は考えることはできない

(2) 核兵器・生態系の危機回避・難民問題の解決のための資源集中・協調のための政治過程・その結果の正統性のあり方

(3) 国民国家の枠内における政府と市民社会の乖離による政治社会の制度枠組みの空洞化

また中村氏は、以上の問題をふまえつつ、権力の譲歩、政治社会の活性化、地球市民という三点を今後の問題解決の糸口として指摘した。

 以上の報告をもとに、ディスカッサントと会場からの質疑を交え、遠藤乾氏の司会によって円卓討論が行われた。

 川崎修氏(立教大学教授)は、グローバル化の概念規定の必要性、民主主義と「平等」の概念的な関係の検討、なぜ民主主義が必要なのかという観点を中心に報告された議論の課題を提示した。

 遠藤誠治氏(成蹊大学教授)は、基調講演や報告が、以下三点の論点を中心に整理されるとした。

(1) アメリカの<帝国>化をどう理解するのか、コントロールは可能かという点

(2) グローバル化をどう理解するのか・国家の力を奪っている力をどのように理解するのか

(3) ネイションなもののみが対抗策か

 このような論点をふまえたうえで、遠藤氏は、地域に根ざした対抗的市民社会の構成が、「世界社会フォーラム」を手がかりとして、今後課題となる点を指摘した。

 山崎望氏(日本学術振興会研究員)は、報告をふまえ、グローバル化によりパブリック・プライベートという問題がどのように変化しつつあるのか、無国籍民主主義と定義されたものにネガティブな側面はないのか、多文化の規範性と社会的排除の問題の間にはどのような関連があるのか、という点を今後明確にすべきとの課題提示を行った。(中俣記)

 

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