小磯・山崎両先生との共編著『地方創生を超えて:これからの地域政策』(岩波書店、2018年7月)
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Contents
2014年、日本創成会議のレポートが全国に大きな衝撃を与えた。出生率の低い東京圏への若い女性の流入が深刻な人口減少をもたらし、多くの自治体が消滅する可能性がある ―― 。これを受けて安倍政権が打ち出した「地方創生」政策に、地方自治体はどう対応していったのか。丹念な調査を通じて自治体現場の声を掬い上げ、これからの地域政策を構想する。
What has the Local Revitalization Policy (LRP) meant to us, people in Hokkaido and Japan in the period from 2014 to the present?
Professor Koiso, who worked for the Japanese government from the late 1970s to 1990s, tries to answer this fundamental question in Chapter 1, using the voices of local officers involved in the LRP and paying attention to Japanese post-war regional development. This chapter examines the relationship between urban and regional, the central and local governments, and public and private actors.
In Chapter 2, Dr. Murakami, a researcher of public administration and public policy, follows with his study on the impacts and meanings of the LRP in Hokkaido and Shikoku. Although he says that local officers find the LRP reflects their local problem of sharp population decline, they conversely feel that the central government is in control despite recent attempts at decentralization.
In Chapter 3, Dr. Murakami clarifies the similarities and continuity between Japanese national development policy in the post-war period and the recent LRP. He places both policies in the context of coordination by the Cabinet and the bureaucracy, which has recently been functionally enhanced through administrative reforms. He identifies the meanings and shortcomings of LRP as a result of the political and administrative reforms in the 1990s and gets a view of future policies under the current Cabinet leadership.
Professor Yamazaki, a researcher of territorial politics and local government, describes in Chapter 4 that the post-war policy for local government has basically been implemented territorially in contrast to the functional implementation of national development policy, but that they share their focus on inter-governmental cooperation in neighbourhoods with principles centralization of management authority and scale merits. He investigates a Japanese history of those policies and relationships between central and local governments.
Professor Koiso then discusses in Chapter 5 future policies to combat sharp population decline and super aging based on his experience as a practitioner and a researcher. He finally proposes national development policies that blend with the modern society and economy, pointing out a discontinuity between policy knowledge and techniques grown in post-war planning.
This book empirically clarifies that the LRP has questioned population imbalance again in Japan -- overpopulation in metropolitan areas and sharp decline in rural areas -- but that it partly contradicts the decentralization, deregulation, and privatization that Japan has promoted for in recent decades. In the final talk, all three authors review what they asserted in each chapter and assess the future roles of the central and local governments, political leadership, and our local autonomy.
=> See also the paper "Improving the current administration’s Local Revitalisation Policy: Promoting a recently co-authored publication", 31st March 2019, Annals, Public Policy Studies [13], pp.99-116.
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関連フォーラムを開催します!
●フォーラム「地方創生を超えて:人口減少時代に向き合う地域政策を考える」
現政権の「地方創生」は、本格的な人口減少・超高齢時代に向き合う地域政策たり得ているでしょうか。
2016年、北海道大学公共政策大学院の研究者がこうした問題意識から、北海道開発協会の支援を受けて「人口減少時代の地域政策を考える研究会」を立ち上げました。この度、岩波書店から公刊した『地方創生を超えて-これからの地域政策』はその成果です。
本フォーラムでは、その著者3名から成果報告をした上で、各方面から討論者をお招きして、今後の地域活性化に向けた方策や可能性について皆さんと一緒に考えたいと思います。
●札 幌(→ チラシ、宣伝記事、開催概要)
日 時:2018年7月21日(土)14時~16時30分
場 所:北海道大学札幌キャンパス(工学部 鈴木章ホール)
登壇者:髙野伸栄先生(北海道大学公共政策大学院長)、執筆者、関口麻奈美氏(プランニング・メッシュ)
主 催:北海道大学公共政策大学院、一般財団法人北海道開発協会
共 催:北海道大学大学院法学研究科附属高等法政教育研究センター
後 援:岩波書店、北海道新聞社●釧 路(→ チラシ)
日 時:2018年9月1日(土)14時~16時30分
場 所:釧路公立大学1階第1会議室
登壇者:蝦名大也氏(釧路市長)、中村研二氏(釧路公立大学地域経済研究センター長)、執筆者
主 催:釧路公立大学地域経済研究センター、一般財団法人北海道開発協会
共 催:釧路市
後 援:岩波書店●福 岡(日本計画行政学会 第41回全国大会、『計画行政(第42巻第1号)』WS概要p.27)
日 時:2018年9月8日(土)13時30分~15時(ワークショップE-WS2)
「課題先進地・北海道発!「地方創生」の成果と教訓を考える」
場 所:福岡大学七隈キャンパス
登壇者:金﨑健太郎先生(関西学院大学)、村上裕一●東 京(→ 開催案内、当日の様子)
日 時:2018年10月18日(木)19時~21時
「これからの「まちづくり」を考える」
場 所:神保町ブックセンター
登壇者:中川敬文氏(UDS株式会社 代表取締役社長)、村上裕一 -
アウトリーチについて
日本計画行政学会企画WS「課題先進地・北海道発!「地方創生」の成果と教訓を考える」(E-WS2)では、北海道大学の研究チームが2016年以降、北海道を主たるフィールドとして取り組んできた「人口減少時代の地域政策に関する研究」の成果を参加者と共有するとともに、そこから導かれる教訓について意見を交換した。
当日は、まず報告者が上記プロジェクトの成果図書『地方創生を超えて:これからの地域政策』(2018年7月、岩波書店)全体を念頭に置いたプレゼンテーションをし、討論者による論点整理とコメントを皮切りに、フロアも一緒に今後の地方創生のあり方を検討した。
全体討論での論点は、①今後の地域政策における国と地方の役割分担、及び、団体自治と地域政策との関係整理、②今回分析対象としていた政策推進体制の下での、長期的視野をもった地方創生のために必要な手法、③機能主義と領域主義の両立可能性、及び、「圏域」論の具体的な社会実装手法、の3つに集約される。
今回の地方創生には、これまで人口減少対策にあまり熱心でなかった自治体に対して「気付き」をもたらした側面があった一方、それは国から地方への数ある交付金の1つに過ぎないものと捉えられ、急かされながらの国とのやり取りだったため、本来あるべき企画調整・戦略策定の主体性という点で問題も垣間見えた。ここからは、国・地方や官・民の関係を再構築する必要性を読み取るべきと考えられる。
この点、いわば「実験」としての地方創生には様々な観点から「解析」と「評価」を加える必要があり、本WSは、それを北海道内外の参加者で行う有意義な場となった。持続可能性のある地方創生のための社会システム構築という課題認識を共有し、本WSは盛会のうちに終了した(『計画行政(第42巻第1号)』WS概要(p.27)を一部修整の上掲載)。
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Acknowledgment
・西田心平「「海」と「道」からの生成誌:北九州・門司港の地域学」北九州市立大学『地域創生学研究(第5号)』(2022年3月、74~87頁)にて、本研究が取り上げられました。
・早川有紀・金﨑健太郎・北山俊哉「地方創生政策の特徴と課題:関西2府4県自治体アンケート調査をもとに」『法と政治(第72巻・第2号)』(2021年8月、1~24頁)にて、本研究が取り上げられました。
・羽田貴史「人口減少社会における地域連携、高等教育の役割・機能、教育学の課題を問う」『教育学の研究と実践(第15号)』(2020年6月、82~94頁)にて、本書が取り上げられました。
・礒崎初仁先生(中央大学)には、「地方創生施策の展開と地方分権:「目標管理型統制システム」の有効性」『自治総研(通巻511号)』(2021年5月、1-39頁)にて、本書を取り上げていただきました。
・山谷清秀「大規模研究開発と地域政策をめぐる問題の構造:なぜアカウンタビリティは混迷するのか」『日本評価研究(第21巻・第1号)』(2021年3月、85-98頁)にて、本書が取り上げられました。
・萩行さとみ・大澤義明「平成の30年で交付金はどのように進化したのか:地方創生関係交付金とふるさと創生交付金との比較」『都市計画論文集(第56巻・第1号)』(2021年)にて、本書が取り上げられました。
・中山健一郎「北海道における移住と地域活性化の考察:北海道ベースボールリーグを事例にして」『経済と経営(第51巻・第1号)』(2021年)にて、本書が取り上げられました。
・森川洋「地方創生政策とその問題点」『人文地理(第72巻・第3号)』(2020年、299-315頁)にて、本書が取り上げられました。
・中村悦大先生(愛知学院大学)と高松淳也先生(名城大学)には、「計画における外部アクターの影響:東海地方における総合戦略の策定を題材に(第3章)」松井望・荒木一男編『自治体計画の特質および地方分権改革以降の変化と現状(東京大学社会科学研究所研究シリーズ No.70)』(55-73頁)にて、本研究を取り上げていただきました。
・早川有紀先生(関西学院大学)には、「関西圏における「地方創生」政策:関西2府4県の自治体調査の結果と全体像の考察」『法と政治(第70巻・第2号)』(29-58頁)にて、本研究を取り上げていただきました。
・松井 望先生(首都大学東京)には、「分権改革以降の自治体計画策定:国の〈計画信仰〉と自治体の「忖度・追従」」『都市問題(2019年9月号)』(公益財団法人後藤・安田記念東京都市研究所、48-61頁)にて、本研究を取り上げていただきました。
・村上 弘先生(立命館大学)には、「<書評>小林大祐『ドイツ都市交通行政の構造:運輸連合の形成・展開・組織機制』(晃洋書房、2017年)」『年報行政研究(第54号)』(日本行政学会、168-171頁)にて、本書を取り上げていただきました。
・金﨑健太郎先生(関西学院大学)には、「これからの地域政策のあり方とは」『国際文化研修(2019年冬・第102号)』(全国市町村国際文化研修所、48頁)にて、本書を紹介していただきました。
・『北海道通信』には、2019年1月22日に取り上げていただきました。
・『Governance(2018年10月号)』誌には、本書を取り上げていただきました。
・『北海道建設新聞』には、2018年7月24日に本書を取り上げていただきました。
・今井 照先生(公益財団法人地方自治総合研究所)には、「地方消滅を加速する、霞ヶ関の「地方自治体いじめ」の構造を暴く:予算で縛り、忖度させる」にて、北海道調査の結果を取り上げていただきました(2017年12月29日)。